使い方

受取利息の所得税控除について

法人が受取利息(銀行)や配当金(株式等)を受取った場合、収入金額(所得)に対して所得税が天引きされて、その天引きされた後の金額を受取っています。このことは所得税法で法人に対しても所得(受取利息や配当金)の支払時に所得税を天引きして支払うことを義務付けているからです。

ところが受取った法人側では受取った時点で既に所得税を支払っているのにもかかわらず、さらに受取った利息に対して、法人税(≒所得税)を支払うことになり、二重課税になってしまいます。

こうした二重課税を回避してもらうために、受取時点で天引きされた所得税を法人税の先に払ったこととする法人税確定申告書を作成することにします。具体的には、天引きされた所得税額を法人税等から控除(又は還付請求)して申告書を作成します。楽々法人税ではこうした処理を全自動で作成しますので何の問題もありませんが、弥生会計側では次のいずれかの方法で法人税の先払いした処理をしておく必要があります。

受取利息には元々、国税(15%)と地方税(5%)分が合算されていましたが、平成29年からは複雑な事務処理から地方税分は平成29年より廃止されました。よって地方税の税額控除も中止となりました。

天引きされた所得税額を法人税の先払いとする2つの処理方法

1 受取った時点では利息をそのまま「受取利息」で処理しておきます。
  受取時点 →(借)普通預金00|受取利息00・・利息入金
期末にまとめて法人税の先払い処理する。
  決算時→(借)法人税・住民税及び事業税00|受取利息00・・法人税分
※法人税・住民税及び事業税額(法人税分)=受取利息額の合計×0.15/0.85
2 受取った時点でその都度、法人税の先払い処理をする。
  受取時点 →(借)普通預金00|受取利息00・・利息入金
   (借)法人税・住民税及び事業税00|・・・・・・・・・・・法人税分
※法人税・住民税及び事業税額 = 受取利息額の合計×0.15/0.85
※国税分は法人税から控除(還付)を請求します。
※地方税分は平成29年より廃止されました
※天引された所得税額は銀行等からの知らせはありません。
※下は利息分(85円)が普通預金へ入金された場合の例です。
  受取時点 →(借)普通預金 85|受取利息 100・・利息入金
   (借)法人税・住民税及び事業税 15|・・・・・・・・・・・・・・法人税分

※昔は「仮払法人税等」「租税公課」「未払法人税」等でも処理されていましたが、現在では「法人税・住民税及び事業税」での処理を会計基準とされました。

ところがこの処理方法が少々ややこしく、勘定科目や金額の計算違いがあると弥生会計と法人税申告書の貸借対照表や損益計算書に微妙な違いが生じてしまいます。それは弥生会計が上記のように正確に処理されていることを前提として、楽々法人税で天引きされた所得税額の控除請求しています。

そしてこうした誤差を発生させないように弥生会計で天引きされた所得税額(法人税の先払した納付額)を「納付明細」ページの下図箇所に設定することで微妙な違いを防止しています。

所得控除をする/しないは、法人の自由です

法人税申告書は弥生会計の税引前当期損益から加算や減算調整をおこなって、税額を算出されますが、これら調整項目のなかには必須調整事項と任意申告調整事項があります。受取利息の所得税控除は任意申告調整項目に該当します。よって所得税控除を申告記載しなければ調整されず、節税面で権利放棄の状態になります。

受取利息の所得税控除以外に任意申告調整事項には次のような項目があります。受取利息以外のこれら項目は、いずれも節税効果が大きく、該当項目に関する別表明細書を添付して申告書提出するべきでしょう。

  • 受取配当金の益金不算入
  • 指定寄附金の損金不算入
  • 災害損失金の繰越

受取利息の所得税控除による節税効果について

受取利息の所得控除は、殆どの法人が関連していて、所得税額控除を申請して節税することができます。しかし、低金利時代の現在では、預金利息で受取る額は僅かな金額にしかならず、所得税額控除を適用したとしても、その控除される税額は100円前後でしかありません。以下、普通預金(利息0.5%)で通期百万円の残高がある場合の例を下に示します。
・普通預金に年間通じての預金残額・・・・・1,000,000円
・年間の利息で受取額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 400円
・年間の控除所得税額(法人税+県民税)・・・・・・・・ 100円

以上のことから受取利息の所得控除の適用を受けてもその節税効果は、あまりにも少ないことに反して利息受取時の会計処理の煩わしさや申告書(別表)等の煩雑さを考慮すると、所得税控除の適用を受けない選択をお勧めします。控除の適用を受けない場合は「納税明細」ページの「受取利息から源泉徴収された所得税額」項目に「0」と設定ください。

楽々法人税では次のような考え方ををお勧めしています。
◆受取配当金がある場合は同一別表六(一)での報告なので、節税効果が少なくても申請する
◆利息の受取時は、受取額をそのまま「受取利息」で処理し、決算時に算出した所得税控除額の大きさから判断する
 → 所得税控除=集計した受取利息額×0.15/0.85